12.11.13 石井文得
家の窓からは、高層ビルのかわりに、Catskillの山の背が視界の果てまで見えます。
日が沈む時間が近づくと、金色の光に包まれた幾層もの色の空の中、一斉に鳥の大群が南の方に飛び流れて行きます。
秋になってから、毎晩のことです。
知らない事だらけで溢れかえる人生ですが、この秋の渡り鳥たちの様子をゆっくり眺めることで、遠い日、学校で習った、清少納言の枕草子がやっとわかるような気がします。この日のために、暗唱したんだ。
秋は夕暮れ。
夕日のさして山の端(は)
いと近うなりたるに、
烏の寝どころへ行く とて、
三つ四つ、
二つ三つなど、
飛びいそぐさへ あはれなり。
まいて雁などの つらねたるが、
いと小さく見ゆるは いとをかし。
日入りはてて、
風の音、虫の 音など、
はたいふべきにあらず。

すれ違う人は少ないけど、たいていは挨拶を交わします。
道先には野花が咲き、よく手入れの行き届いたお屋敷前の豪勢な花たちにも見とれ、秋の散歩は、毎回とても快適でした。
なぜこの町に引っ越してきたかと、よく聞かれます。
なぜかというと、「何となく」というのが、短い答えかもしれません。
私はそろそろ、「アーティストになりたい!」と思って、去年の暮れ、8年半働き続けた、セーフティーネットでもあった仕事を辞めました。
晴れて人生再スタートです!
23歳のときに単独渡米した時とは、少し違う。もうあれから13年。
周りでは、母親になって、子供や、親のことを考えながら生活している人が殆どの年。
でも、私は、こう生きるしかない。
人生は、いつも、予定外のことが起こるもので、立ち退きの連絡が早速大家から来ました。2ベットルームのアパートを4ベットルームにして、家賃を倍取ろうとする、よくある筋書きです。
3年間住んだ、子宮的存在となっていた心地よいブルックリンのアパート。とても残念なことだったけれど、しかたなく、これも何かの縁だと思って、次のアパート探しの始まり。
2ベッドルームが$1,000だった頃のWiiliamsburgも、もう、幻。(2006年くらいまでは、幸いにもその値段で見つけられた)
”ギター弾きに貸す部屋はねえ〜”って歌みたいに、家賃高騰まっただ中のブルックリンでは、安定した収入がないものには、いい部屋はありませんでした。
そして、彼の一言。
そんな落ち込んでいるときに、「Hudsonが熱い!」と、サブリミナル的に耳にしいていた言葉につられ、
ということで、そのエリアに住んでいる友人を訪ねながら、さっとチェックしておいた、craigslistに出ていた大家さんにアポを取って、物件を見てみました。

ブルックリンに比べると、ほぼ二倍の広さで、半分の家賃+お庭付き。マンハッタンから電車で2時間。
Hudsonには2年前に一度、彼のコンサートについて24時間程滞在したことがあります。
そのとき、このミュージシャンとアーティストの集まる小さな町を歩いていて、ふと、ここでまた一から始めるのも悪くないかもしれない、と、直感的に思ったのでした。
そして、夏至がすぎた頃、めでたく自分の誕生日に、無事新しいお家に引っ越しとなりました。
さようなら シティーライフ!
こんにちは 世界!
