奈良通信 2

 

12.15.13 明音

先日、学生時代の同期と会った。

私を除く林学科の同窓生のおよそ半数は、今やその道のプロフェッショナルで仕事をしている。
便利な時代なのに、年に1、2度くらいしかメールが来ない友達に数年振りに会うことが出来た。
今日の結論は、彼に会えて良かった、というお話。

奈良市の住宅街は、ゴミ捨て場にカラスが来てゴミを散らかす為に、長年その対策に追われている。彼は野鳥の専門家で、すぐにカラスがゴミを散らかさないようにする手段を教えてくれた。

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カラス被害をなくすには、ゴミボックス(カラスいけいけ等)が1番良いとのこと。

私の家のゴミ捨て場は、昨年何度もカラスの被害に遭った。毎週当番制で当番になった家がそのゴミ捨て場の清掃管理をする。
毎日、365日誰かが管理していることになる。
今年被害が無かったのは、ゴミネットを二重にし、その周囲に水の入った2リットルのペットボトルで囲うように改善した。
カラスがネットに入ろうとしても、さらにネットがあり、入りにくくしている状態である。

では、何故カラス被害の対策もできるのに今も被害があるのかというと…

知能の高いカラスは、ゴミネットに30cmの隙間があるとゴミ袋をつつくという調査結果だった。
人はゴミネットをしっかり被せたつもりで、ある調査地のゴミ捨て場では何ヶ所も30cm以上の隙間が見付かったらしい。結果、カラスの被害の最善策は隙間が出来ないゴミボックスしかないという話であった。

これは、もはやカラスだけの問題ではなく、人間側に問題があったということになり、絶対的に被害をなくすのは難しいことが分かる。

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続いて、彼が研究しているイヌワシの話をした。
(イヌワシは、絶滅のおそれのあるちょっと大きめのワシ・タカの仲間の猛禽類で、食物連鎖のピラミッドの頂点にいる鳥である)
関西のある県では2ペア、広い県内で4匹しか生息していないという。そして、ここ数年は繁殖がうまくいっていないことも分かったらしい。
そこで、私は、”イヌワシの減少は今の環境が住みにくいからで、日本の何処かもっと住みやすい所へ移ればいいんじゃないの?” と、聞いてみた。
ところが、彼の考えは違っていた。もともとイヌワシが生息していた自然を破壊して、開発してきたのは人間。
これから人がやるべきことは、イヌワシが増えるように少しでも環境を回復させてあげるのが筋である、と。

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専門家の彼と私の思考レベルが違うのは大前提だが、その時、確固たる自信を持って答える姿に圧倒され、少しうらやましくなった。
一方の私は、はなからあきらめて、この先ここでイヌワシが生きるのは無理だと決めつけていた。
このことは、今回に限った話ではなく、物事の善し悪しについても同じことがある。
大概のことは、自分の目線で、何が正しくて、何が悪いか、善悪の判断をしてきたと思う。
その日、彼に会ったことでふとした話から、今までの一方的な見方を捨て、多角的に物事を考えられる人になろうとしていた自分を思い出すことができた。

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蛇足であるが、春日大社や東大寺がある奈良公園では鹿の問題がある。
増え続ける鹿のキャリング・キャパシティの問題、農作物の食害、年間100頭におよぶ交通事故、観光客のいたずら等々。長い間、神さまの使いとして大切にされてきた鹿も人と共存するのが厳しい時代になってきたようである。

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こちらはレア写真。
奈良公園の鹿は何故かクサリかじる。
鉄分補給か?歯みがきか?