London通信 1

1.23.14 伊藤さおり

ロンドンに出戻って来てから、18ヶ月間が経つ。

本当に心が赴くままの旅に、ポーーーン!

って世界の海に飛び出たらいったい何処にたどり着くんだろうって。

離島、ヒーリング、パーマカルチャー、伝統工芸、コミュニティーなどがキーワードだった。デザイナーとして6年間勤務したフェアトレードを推進する会社を辞職してロンドンを出たのは福島の震災の直後だった。人間の汚いところが浮き出ている世界情勢にうんざりしていた。

社会に対して希望を持てなかった。先進国の都会に住んでいると、間接的であるとしても、人権を損害せず、環境を汚染せず生活する事が難しい現状。弱者や少数派や、社会の体制に反する者は抑圧され、苦しみ、利用される事が多い社会の仕組み。大人って汚くて、弱くて、浅はかで、無責任で、偏狭で、欲深いと思った。
人間なんてそんなモノだから、ま、いっか、しょうがないって思えなかった。

そんな汚い大人と全く関わらない、オルタナティブな生き方はないのかなって、追求してみたかった。

そんな感じで心赴くままの旅に出て数ヶ月後、カウアイ島の奥地にたどり着いていた。
そこのコミュニティーには都会にはないオルタナティブな生き方があった。
本当に天国みたいだった。

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自我が強い者は自己中心的だ。

自分の自我の欲望を失いたい欲望があった。
今までの概念をトランセンド(超越)したかった。島での最初の3ヶ月間は、瞑想状態で生活をしていた。
島のエネルギーは、自我をなくしてゆだねてしまえばすべて大丈夫という包容力でいっぱいだった。

毎日その島の美しさと包容力に圧倒されていた。

本当に死んじゃったかな?と思う事もあった。無くしかけて初めて自分にとって大切なモノに気付くというけれど、
私にとって、それは自我だった。自我なしでは失ってしまう自己の意識。島のコミュニティーでは名前を変えている人も少なくなかったが、私はSaori Itoという自己を失えなかった。天国みたいなんだからこのままここにいなさいという声も自分の中で聞いたが、身体が不調を訴えはじめた。

自分に正直に生きる事の大切さを、また違った角度から学ぶ事になった。

旅に出て14ヶ月後ロンドンに帰って来た。旅で培った経験をどうやって活かす事ができるのか。

自分で育てた野菜を頂く事から得るチカラや、コミュニティー内での信頼感、ヒーリングのエクスチェンジ(交換)などを、ロンドンという都会に帰ってからも感じる事ができるのか、試行錯誤の18ヶ月間。

コミュニティーベジタブルガーデンを支援するチャリティーのお手伝いをしたり、友人の屋上菜園を手伝ったりしてみたが、ロンドンでの自給自足の現実は厳しい。出来るだけ近辺の農家から来ている無農薬、有機栽培の野菜を買うようにしている。

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あとは、都会には自然が少ないけど、自然な人達がまだいる。
自然に人と繋がって、偶然に偶然が重なって何か実がなった時、

私にチカラと満足感をくれる。人とケミストリー(化学反応)が起こり、自分のエネルギーを注ぎ、自然と生まれ育ったモノを授かる。自分で種から育てた野菜を食べる感覚と似ている。

大地の中でケミストリーが起こり、自分のエネルギーを注ぎ、自然と生まれ育ったモノを頂く。

そんな大好きな人達との自然なエネルギーの交換から生まれた実を、先日授かった。

部屋の境目を創るために、調度必要だった、窓がついているタイプの古いドアだ。

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カウアイ島の親友が、ロンドンに来てくれた時に宿泊していたB&B(民宿)の創り主である、
アーティストのヒースさんと、8年前一緒にフェアトレードで働いていた友人のアナちゃんの、
8年来のハウスメートである、ミュニエ君と私の化学反応から授かったドアだ。もうこのドアときたら、美味しそうでしょうがない。
まだ料理をしなければ食べられないのだが、今から料理するのが楽しみだ。

施術に調度良いマットレスも一緒にゲット。撮影に使われただけなようで、新品同様である。

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Omnipresentに参加させて頂ける事になったのも、そんな自然なケミストリーとエネルギーの交換があって授かったモノ。

そんな自然に起こった恵みが、今は私を一番にっこりさせてくれる。まだまだロンドンで頑張っていけそうだ。

自分の感受性に正直に。自分の思っている事と、言っている事と、やっている事が調和するように。自然と一緒に深呼吸して、自然に生きて、自然に人と繋がって、自然と生まれる。

そんなオーガニック(有機的)な、関係がどんどん広がって、美味しい実がどんどんなっていったらいいな。