Hudson通信 5

3.9.14 石井文得

久しぶりに日が昇る前に起床した。今日から Daylight Saving Time(サマータイム)が始まる。
朝の6時、こうして、ジャーナルを書き始めたが、昨日までだったら朝の5時。
日の出まで後1時間。
外もまだ暗い。

冬がなかなか過ぎ去らない 。

12月の新雪をきゅっきゅっと踏んで歩いた感覚は、 冬も悪くないと、これから始まる新しい遊びと行事(そり滑りとか、アイススケートとか、雪の彫刻作り)に 心を躍らせたものだった。
春分の日まであと2週間弱。なかなか溶けない、歩道の脇に横たわる泥の混じった雪の固まりは、長い厳かな冬の神秘性を消し去り、雪はもういい。楽しみはただ、春の到来の証拠を見つけるだけ。

近所のスノボ少年達。家のブロックにとても良い坂がある。

<近所のスノボ少年達。家のブロックにとても良い坂がある。>

それでも少しずつ日照時間は伸び続け、東の窓から入ってくる朝焼けの質は、冬至辺りの早朝の照らし方とは異なる。

家の植物達は、新たな息吹を現し、私を喜ばせてくれる。
特に、生存を懸念していたビワの鉢植えが、新しい葉を1、2、3と出し始めた。

ホームベースで過ごす冬が続く年は、この終わりの頃が、しんどい。はやく春が訪れてほしい。ウィンターブルースが心に鳴り響く。

<ハドソン氷河、重なり合う氷>

<ハドソン氷河、重なり合う氷>

この冬は、アメリカでも日本でも通常よりも寒さが厳しいようだが,この土地で初めての冬なので、その通常がわからない。 それでも、寒さの中、太陽の輝く青い空が、東海岸に住んでいる恵みである。

でも、氷点下20℃にもなる日に外を歩くと、寒さによる体力の消耗が明らかに感じられた。
それが0℃あたりまでになると、急に暖かく感じで、英語の教科書のフレーズ、Spring has come!を口ずさみながら、
「あ、今日Tシャツ着ちゃおうか」
とうとうアメリカ人っぽくなったものだ、と、可笑しくなって周りを見渡すと、やはり、期待を裏切らず半袖で歩いている人がいる。メールマンも半ズボンで配達している。
こういうとき、愛すべきアメリカを感じる。

私がハドソンに移ってきてから、8ヶ月経つけれど、この町も、日に日に町の変化が顕著である。

先週大家が、友達の不動産屋が家の市場価値をアドバイスしてくれるので、連れてきて間取など見せてもても良いかと連絡がきた。渋々okと言って、金髪で白人の感じの良い中年女性が来た。

結局はこのハドソンブームに乗って、家を売りに出すようで、なんと、私は、また新しい家を探さないと行けなくなった。このハドソン通信でも、あまりハドソンの町のことを書くまでに至っていないのに。私の今までの経験からして、大家は大抵嘘をつく。モラルよりもお金が先だ。勿論良心的な大家さん達もいるけれど、残念ながら運が悪いのかもしれない。渡米をしてからこんな風に家を追い出されるのは、3回目になる。そして、引っ越しは、、、現在17カ所目の家。

ハドソンもまた、この小さい町並のペースで、NYの様になりつつあるのかもしれない。

パフォーマンスアーティストのマリーナ・アブラモヴィッチも、この町に学校を作るといってオンラインで寄付を募るkick starterを使って$661,454も集めた。
Talking HeadsのDavid Byrneも、「NY市は裕福層に壊されつつある。もう、NYは引退して、ハドソンのヒップスターコミュニティーに参加するか?」って冗談半分でNYタイムスで言っていた。

NYでも、おもしろいことは、続けられていると思う。
ただ、アーティストやミュージシャンが移動すると、その後すぐに、富裕層と商業が後をつけてきて土地を買いしめ、チェーン店などを開き、地域を耕した人々は、そのまま追い出される。そういうことが可能なシステムになっている。レンターは自分の権利を守る体制が出来ていない。サンフランシスコから移ってきたアーティストの友人もそう言っていた。(そのまえに、元々住んでいた人々も迫害されているのだが)

先日も地元のミュージシャンの子が、ハドソンを追い出されたらどこに行けば良いの?という記事を書いていて、さて、今度はそれが、自分たちの課題になった。

次はどこに行こうか?
アメリカでも、大都会ではないけれど、素敵な、似た考えの人たちが集まって、面白いコミュニティーを作っているところが、国中にある。
瀬高特派員のいる、ポートランドがいいなぁ。でも、現実引っ越しとなると、ずいぶんとエネルギーが必要となりそうだ。

Providenceからの帰り道で見た虹

<Providenceからの帰り道で見た虹>

冬の間、町ですれ違う人たちは少なかったけれど、メインストリートには、こぎれいなhome buyerの人々が、どんどん増えて行った。

春から秋にかけては、毎週土曜日に駐車場で、小さめだけれど、ファーマーズマーケットがある。その間は、毎週楽しみに、買い物に行ったけれど、基本的にハドソンの町の中には、近距離のグローサリーストアーがない。

<ファーマースマーケットのベンダーの一つのお花屋さん 毎週見るだけでうきうきした>

<ファーマースマーケットのベンダーの一つのお花屋さん 毎週見るだけでうきうきした>

それが近々、メインストリートに、ファームマーケットが出来る。車で25分くらいのところにあるHawthorne Valley Farmという、ここも主にオーガニックでバイオダイナミックス農法を実践しているところなのだが、このファームストアーがやってくる。そうしたら、町の価値も、アップグレードするだろう。

冬の間は、たいてい、少し離れた地元の普通の淋しく感じるスーパーに行き、限られたオーガニックセクションのところで野菜を買う日々。

ハドソンは、ピンキリでもアンティークストアーが幾十もあり、ブティックもあれば、素敵なリサイクルショップもある。裕福な層〜私たちのようなアーティスト〜生活保護を受けている貧しい層と定職を持つ一般の人々がいて、その格差は大きい。

その昔はNYの近海で捕獲されたクジラをハドソン川を上って解体する場所として有名で、経済は円滑だったらしい。あとボタン工場も沢山あって、バングラディッシュの人々が働いていたが、閉鎖されて仕事は無くなったけどコミュニティーは残っている。

空き家も多く、古いので傾き崩れかけている家が多い。地震の多い日本では、決してあり得ない家ばかり。

町自体はお金はあまり無いらしく、家の所有者は高いの税金を支払うらしい。

<家と同じストリートにある大お屋敷。こんなお家もぽんぽん並ぶ>

<家と同じストリートにある大お屋敷。こんなお家もぽんぽん並ぶ>

上の写真とは違って、我が家は2階建ての大きめな普通の家の上階で、うちの真下には小さい子供のいる家族が、半地下には、中年のカップルが住んでいる。
私たちはみんな追い出されてしまう。
みんなそれぞれたじろいでいるはずだが、我が家にとっては、結局、良い結果なのかもしれない。

室内で過ごすことの多いこの冬に、日々、実感した、文化の違い。2つ。

匂い

皮肉にも、澄んだ空気と静かな環境を求めて移った家が、家はあちこちに隙間があるらしく、毎晩ディープフライの油の匂いとテレビゲームの音が漏れてくる。

余計なお世話だけれど、毎日何を食べているのだろう。
仕方ないから鼻を利かせて、埋められる隙間は自分たちで埋めて、騒音はホワイトノイズ(加湿器等)をつけて、お香をたいて、出来るだけ気にしないようにする。

そんな中、食の格差ー富の格差というものを、意識せざるをえなかった。

レコーディングスタジオの台所で、友人が野菜を炒めていると、その場に居合わせたDJの人が、
「何作っているんだ?」
「ブロッコリーだよ」
「僕の知ってるブロッコリーとは違う。今まで缶以外の野菜を生まれてから食べたことがないんだ」
本当の話。

それが当たり前の家で育ったら、生の野菜は買わないのかもしれない。
当たり前のことは、なかなか気付きにくい。
そして、人それぞれ、優先順位が違うから、彼にとっては、もっと他に大切なものがあったのかもしれない。

金銭的に余裕が無かったら、それでも、体に良いもの、有機野菜等を、食べられるだろうか。
有機野菜どころじゃなくて、それこそ生の野菜を買うことが出来るのだろうか?

健康を意外に気にする前のルームメートとも、その話題についてしばし討論をした。
私の言い分は、「テークアウトをやめて、自分で作れば良いじゃない? CSAで手頃な野菜も手に入るし。」
彼は、「むーーー」
作るのが苦手な人は、手作りの美味しさを知るところから始めた方が良いのかな?面倒くさいか。
一年一緒に暮らして、台所に立つ彼を殆ど見なかった。

いや、日本の場合はどうなのだろう。

家のファームの野菜 宝

<家のファームの野菜 宝>

それでも有機野菜と言っても、別に安全で最高という訳でもない。
アメリカの食の世界は、かなり歪んでいて恐ろしい。オーガニックを承認するUSDA(農務省)は、枯れ葉剤を作ったモンサントの元ロビーストが特許技監を勤めたりする。

今年からグルテンフリーにしている私は、玄米を食べるようにしているけれど、ある地域で作られたアメリカの玄米は、ヒ素が含まれているという。

去年NY市では、前市長が大きなソーダのカップを映画館やファーストフード店などで500ml以上の販売を禁止した。これは、低所得者の糖尿病患者が増え、市の負担額が大きくなり、予算カット為に作られた法律だ。
体に毒ないろいろなものを禁じたら、医者も少し暇になるだろうし、製薬会社も売り上げは減るだろう。

5

お金が中心で動いている社会から極力離れるには。

お金や利益で繋がっている人間関係や、アート、音楽などは、薄っぺらくて興味がわかない。

これが21世紀。大人の試練。

そうしているうちに外も明るくなった。窓から見える雄大なCatskillの山々がまた美しい。

先週まで書いていた原稿と、またまた全く違う成り行きになってしまった。

荷造りや家探しのことを考えると、気分が滅入る。それにしてもまたずいぶん持ち物を増やしてしまった。ガンジーが亡くなったときに所持していたものの写真をみたことはあるかな?

渡世人一家。頑張らないと!
これがベストなんだろう。

Gandhi

そんな中、日本では、歴史的にも重要な記念日がもうすぐ訪れる。
まだ家や家族を失った人々、非難難民の方々が、沢山いるんだ。

家族や友人からも、中国からの大気汚染の影響の話もよくきく。

それで、先日思い立ったのだが、そんな環境汚染に反対して、私は中国製のものを買わないことにした。(あくまでも汚染基準に反対しているのであって、国に反対しているのではない)

ボイコット!

勿論難しいものもある。デジカメ機材とか電化製品とかは特にそうだろう。ラップトップの中身も、中国製ばかり。

せめて、衣類や替わりのものがある場合は、中国製を絶対避ける。私一人の行動で世界が変わる訳ではないけれど、私は出来るだけ参加したくない。

アメリカでは、税金の一部を、非営利団体に寄付をすることによってその分が免除になる。私も2013年分は初めて、自分でもボランティアーをしている非営利団体のニュース番組に寄付をした。わずかながらも自分の税金でドローンが作られ、世界の反対側で罪の無い人々の命が奪われてゆくのには加担したくないから。

それでも切っても切れない、この関係。
プロテストに出かけても、届きにくい声で叫び続けた後、日常の生活に戻って何が出来るのだろう。反原発でも、私の単位で何が出来るだろう。生活をしていれば、何かしら、戦争や環境破壊に繋がってしまう。

だから、ボイコットはいいアイディアだと思う。なかなか楽しい。ゲーム感覚で出来る。
生産国をチェックする。他の国々でも奴隷制のような労働を認めているのではないけれど。

アメリカでは多く広がる遺伝子組み換えの食べ物、その会社、その他にも悪徳の大企業など。
基準は、テレビで流れているコマーシャル(見ないのでわからないが)の製品は、大抵買わない。

といっても、車社会で生きているので、ガソリンは買わざるを得ない。
これは、ごめん、マザーネイチャー!
でも、ボイコットがまだ出来るうちは、幸いなのかもしれない。

もし、渋谷でもタイムススクエアーでも、意味も無くまぶしい広告を放っている会社が、急に電灯を消したら、それだけで、逆に素晴らしい広告になるのではないだろうか。

IMG_4220

食べるものにはくれぐれも気をつけてね、と父に言ったら、
「戦争中や直後の日本なんて、殆ど食べるものが無かったのに、あれだけ長生きしている人がいるんだから、個人の気合いかなにかで大丈夫なんだよ」
って、生まれて初めて聞いた、納得のいく言葉!
そうかもね。

でも、一緒にボイコット始めませんか?

Hudson通信 5」への5件のフィードバック

  1. 戦争とか経済資本主義をボイコットするには、手始めに大手銀行の使用をやめて、地元の信用金庫とかに変えるといいと聞いたよ。私もアメリカに来た当時はシティーバンクとか預けてたけど、私の預けているお金が何に使われてるのか知った時、後悔したよ。

    ポートランドおいでよ。冬は雨続きで気が滅入るけど、その分、春夏の清々しさと、毎週のフリー音楽祭は長い冬を待った甲斐有り。堪らんですよー。

  2. 最近おんなじようなこと考えてる
    グローバリゼーションって結局じぶんで
    じぶんを苦しめちゃって、安い外国産を買うことで地元から仕事がなくなっちゃってるよね。
    NYCはだからWalmartを入れないようにしてる。
    ローカルビジネスがなくなるから。

    Western MassachusettsのBerkshare county
    ではローカルだけのお金がある。
    まあクーポンみたいな感じではあるが。

    http://www.pbs.org/newshour/bb/business-july-dec13-berkshares_09-05/#the-rundown

    このしたのドキュメンタリーで
    その街の自転車屋さんが嘆いてたけど
    店に置いてあるものはほとんど中国製だからローカルで作ってないから後ろめたいみたいな。
    でもそれでも自転車屋が町からなくなるよりはいいよ。

    あとIkeaもスエーデンで工場を増やすより
    アメリカの方が安く人雇えるって工場はこっちに作ったし。スエーデンとか社会福祉がちゃっんとしてるらしいしね。
    アメリカは最低賃金安いし。

    ものに囲まれているっていいことだけど、
    すぐ壊れる安物を何回も買うより、ちょっと高くても一生使えるものの方が最終的に安くあがると思い出してる。きょうこの頃。

  3. みほちゃん コメントありがとう!そのことも書こうと思っていたの。私は未だ汚職等行われて問題になっている大手銀行の顧客で、地元の銀行に移そうとずっと思っていたの。
    もう一つのコメントのゆたか君のリンクに、現地通貨を発行している街のレポートがあって、その街の銀行が、Bank of Americaが無くなった後、つい最近出来ました!なので、スイッチしてみようと思います。
    ポートランド必ずいきたい。私は5時間くらい滞在したことがあるんだ。Cherry Sprout Grocery Storeで彼がコンサートやって、そこで買ったローカルのお味噌が美味しかった!

  4. ガンジースタイルのPassive Resistance/Non-violent resistance のボイコットは誰でも今日から始めれるアクティビズムで、何か汚いヤツらに加担しないで楽しく生きたいってみんなの根底にフツーにあっていいと思う。自分のエネルギーとお金が何処に注がれていってるのかなって意識するだけで大分違うよね!

  5. フミエちゃん、
    無事新しい家が決まったかな?いい所を見つけていることを祈ります。
    先月、ニカラグアに行ってきました。中米で一番poorな国と言われている。けど、人々は元気に生きている。人間の生活の原点を感じた。よけいな物は無い。もちろんマクドナルドもない。代わりに豆やが一日中豆を煮て、トルティーヤ屋がトルティーヤを売りにくる。車もあるけど、馬車もフツーに走っている。ほとんどの道は未鋪装。道路では牛飼いが牛の群れを散歩させ、豚やニワトリも横切る。馬が一人でバナナの束をしょって運搬し、水牛がリアカーを引っ張く。お金のために働いているというよりも、人も動物も生きるために働いていると言う感じ。貧困で今日食べる物にも困っている人たちもたくさんいる国だけれど、すごくいいと思った。
    自分たちがいかにいらない物に囲まれ、大企業のコマーシャルに踊らされ消費社会の渦に飲み込まれているか思い知らされる。帰ってから一週間ほどいらない物を整理した。けど、まだまだ。もっとミニマムに暮らし、自給自足な生活に近づきたい。
    この前話していた私達の家探しの報告をしたくて、連絡しようと思ったのだけど、FB辞めたのでしょうか?Roxburyって町で一軒気に入った物件があってそこと話を進めだしました。まずは週末だけだけど、田舎暮らしが待ち遠しい。よかったらヒマな時でもメールください。
    メグ

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