6.1.14 石井文得

Sunshower and Double Rainbows 天気雨と二重の虹
二ヶ月前までの、永遠と長引いたハドソンの冬。さっとバトンタッチされた春は、なかなか緩いペースで進んでくれて、心地よく清々しい日々が今日まで続いている。
道端に咲く花たちは、まるで花火大会の催しのように、隔週おきに次々と姿を変えて行く。
先日一大決心をして、農家まで自転車通勤を始めることにした。
ブルックリンでは当たり前だった、ギア無しのロードバイクでの移動。
こちらではサイクリストに慣れていないドライバーとシェアーして走る片道約45分、上り坂の田舎道。ちょっとどきどき。
林、山、畑、小川、池、豪邸、おんぼろ小屋、カントリークラブ、鹿、ウサギ、鳥、いろいろな景色、生き物を通り過ぎる。ゆっくりと。
一人で走っているので、色々な思い出、人々のことも、風に吹かれて蘇ってくる。
自転車通勤+肉体労働は無理だろうと思っていたけれど、なかなかこういったカーディオのエネルギー燃焼が反って体にプラスの刺激を与えて疲れを癒してくれる。
もちろん環境にもよい。
自転車は相変わらず素晴らしい!でも実際は、鳥のように飛べたらなぁ、などと子供のように、風に舞う鷹を見上げながら、未だに車の免許を取ってない、成年に達っせない、私の唯一の独立手段の象徴
自転車で行きたいところまで好きなときに行く!
農場の野菜達は、どんどん大きくなって行く。そして、雑草達も負けずと、茂り始める。
この数週間でのフィールドでの作業は、大きくなった苗を畑に植え替え、その後の雑草抜きに、グリーンハウスでのトマトの準備などなど。
去年もこのトマトは信じられないくらいの美味しさだったけれど、グリーンハウス無しでは病気にかかりやすく、シーズンを早めに終えてしまった。今年はもう少し長い期間収穫が出来るように、グリーンハウスを畑の真ん中に建てた。
CSA先のブルックリンでは、友人のユタカ君が声をかけてくれたおかげで、友達の何人かがサインアップしてくれた。
配達は来週の土曜日から始まる。彼らのことも思いながら、心を込めて、野菜を育ててる。
レタスやケールは、もう食べごろの大きさに育っていて、先週から家の食卓でメインディッシュになっている。生命感みなぎる野菜は、健全な肉体と魂を提供してくれるような気がする。

5月初めの地道にこつこつと雑草抜き。ゆっくりのような、あっという間のような、不思議なペースで時間は過ぎる。農業は瞑想のような作業。

before & after 人参の双葉は他の雑草と似ているので、このギザギザの葉が出て来るまでは、見分けるのにかなり苦労する
雑草抜きで、手のひらが筋肉痛になったりする。
そんな手を使って、この春になってから、私はジャクリング状態。
家に帰ると、バンドの練習。スタミナショーブ。
この疲れ目の時の練習が、どんな状況でも時間でも演奏しないと行けないというツアーに備えて、いい訓練になっていると信じたい。
地元ハドソンで行ったコンサートでは、尊敬される熟年+中堅ジャズミュージシャン即興の前座を努めさせてもらった。

Joe McPhee + Chris Corsano
世界でも一流のドラマーとして活躍しているクリスの前でパーカッションを叩くなんて、まさに次元も勝手も違うよう。遠目から聴いてるジョーを、スポットライトを避けて見ては緊張する。でも、自分のベストを常に尽くすようにするのが、私たちに与えられたチャンス。彼のバンジョーも軽快、日本海の波乗り、って感じ。
姿勢を正し、落ち着いて音楽に集中して、演奏する。
すると後で、クリスは新米ドラマー(私)の、日本民謡や太鼓に影響された、スペースの取り方、シンプルなリズムを賞賛してくれた。
そんな嬉しいお言葉の次のコンサート。記念すべき、ふたけた突入第10回目に迎えたKingstonでの、友人のバーベキューパーティーショー。
で、まぁ、そこでまた振り出しに戻る。人生七転八倒って、覚悟しておけば、そんなに落ち込まなくてすむのかもしれない。
半野外の演奏で、自分たちの音があまり聞こえず、苦闘しながらの演奏。
コンサートが終わると、彼のシアトリカルな詩の朗読の演出力もあり、観客から感謝の声をかけられたけれど、まったく自分としては完敗気分。
ところが翌日、録音した音源を聴いてみると、まったく自分でレジスターした感覚とは正反対で、なかなかよく弾けている。
なんとサイコロジカルな現象なのだろう、、、。自分の知覚は、本当の姿とは違うこともある。それが普通なのかもしれない。
その日のタイバンは、ボストンとプロビデンスからツアーで廻ってる2人組。
そのうちの一人、パンクでおたくのギターリスト、Camden。まさにアメリカっぽいガレージでの演奏。こういうハウスショーは楽しい。
近所のいろんな世代の方々が集まり、和やかな晩だった。
昨日は車で一時間足らずのNew Lebanonという、かつてはShakers*の町であった、現在はSufi(イスラム神秘主義者)の静養所/コミュニティーとなっている美しい会場で、Sufi音楽家のAmir Vahabのコンサートに行ってきた。RumiやYunus Emreの詩の朗読を曲の間にしながらの、2時間半の神秘的なコンサートだった。
私たちは来週から、ニューイングランドからモントリオールまでの一週間のツアーに行ってくる。
また新しい土地でより多くの人々と音楽を通して、コミュニケーションを目指し、マスターを見習って、演奏したいと思う。

こちらは4月のフィラデルフィアのコンサートにて前座のGeb the Great Cackler。自転車屋さんの二階で演奏。
うまく弾けなくても、間違えても、深く呼吸をして、自分たちよりも高尚な存在の、音楽というdivine/神聖なものに、私としては、仏壇にお供えするように、演奏する。そんな心構えだと、自分のエゴや虚栄も吹っ飛ぶ。
*Shakersとは、”キリストの再臨信者の合同協会。礼拝のとき激しく体を震わせて踊るのでこの名がある。一七四七年イギリスのクエーカーの信仰復興運動のとき出現した一派。指導者がキリストの再臨と信じられていた。迫害でアメリカに渡り、信者たちは簡素で機能的な家具を作って有名。独身主義・財産の共有・世俗からの分離、を原則とした。千年期教会とも。 ”( 世界宗教用語大事典ー中経出版より)
宗教学は、とても興味深い。
鳥学も面白い。
これはwrenの雛か?