9.12.14 石井文得

アリゾナのステートパークにて。サギ。
アメリカ横断の旅に出てから、2週間が過ぎた。一度は体験したかったアメリカ横断。
とうとうこの大きなアメリカを横断している。
飛行機では見られない、様々な景色の移り変わり。
ニューヨークに移った当時は、マンハッタンの街を歩くだけで各ブロックごとに変わる文化や雰囲気に感動したけど、アメリカ大陸横断となると、時間/州単位による土地、気候、風景の変化に驚きの連続。
この数日はアリゾナ州セドナの近くに滞在している。

Vortex、地球宇宙からわき出るエネルギーの渦があちこちにあるようで、ニューエィジ系のお店も多い。ツアーに参加しなくても、ナショナルパークをハイキングするだけで、感じる 気!
学生時代何度か訪ねたことのあるアリゾナ。グランドキャニオンはあまりにも大きすぎて、その雄大さを把握できなかったのを覚えている。それ以来、この辺りは訪れたい町のトップリストには入っていなかった。でも実際再訪してみると、四方に見える偉大なる渓谷とこの地球の遥かな時間経過の営み。ニューメキシコでも同様。目を離すことはできず、私はカメラをずっと手にしている。
気温があまり上がらず春の延長のようなハドソンの夏では、荷造りとツアー準備で、キュウリやトマト等旬の野菜を食べる以外夏らしい気分は訪れなかった。そのかわり、一年前にブルックリンを出た時と同じく、所有物をもう一度チェック。
キープor処分か。判断の日々。
今まで書き綴っていた文章やジャーナルブック、ボツのネガ、プリントなど、結構な量を始末した。
人はずいぶんゴミを出すものだと、反省もし直した。
家具や洋服も、家族から譲られたり手作りのものは捨てられず、気に入ってるものだけを残し、後は古着屋さんへ売ったりGood Willなどにドネーションした。あれだけ好きで集めた我が家の観葉植物も取り敢えず友人に預かってもらう。
なくなってみると、案外平気なものだ。何を手放したか、殆どのものは思い出せない。それほど重要ではなかったのかな。
そして、確実に半年は東海岸に戻る予定はないので、残った所有物は3mX3mの倉庫に。
less is moreで暮らしたい、私たち二人分の生活がこの大きさで収まったのは嬉しい。
この半年間必要なものだけ、楽器とともに車の中へ。

この倉庫、結局旅立ち前には一杯に
これで、家のない生活開始!
家のない生活なんて、どうだろう?
普通だったら、一戸建てを目指す年。
それが、ホームレス。
というよりも、ハウスレス。
そしてバンでのモバイル生活スタート。
スウィートホームは常に心の中にある。
(友人のお陰で滞在できる部屋、場所があるので、完璧にはハウスレスとは言えないけど)
この2週間、友人/親類/ホテルと、ほぼ毎晩違うベットで寝ている。
旅立ちとともに味わう開放感。
自由。
これで、どこにいてもよし。向かってもよい。(ツアーの日程を組まないと行けないが)
旅の道筋を詳しく辿ると、また書ききれずに終わってしまいそうだし、そういえばハドソンの最終回も書き終わってない。

旅の車輪のあと
なるべく全ての感覚をリセット/オープンにして、変わりゆく景色、人々、文化をこれから綴って行きたいと思う。
このアドベンチャーはハドソンからノースカロライナまで南下し、その後は中部を通ってきた。
ケンタッキー州も通り過ぎ、ここで密かに望んでいた長年の夢、私の大好きなミュージシャン(彼の友人でもある)ウィルオーダムのお家に寄る!私はウィルの大ファンであり、彼の音楽は私の人生に多大な影響を与えた。
強く願っていると叶う夢ってあるんだ!と確信。叶わない夢もあるけれど。だから、夢は沢山抱いていた方が良いと思う。夢が現実になったら、また新しい夢を見る。
そう、何かに夢中になっている間に、いつの間にか夢の中に入る扉があるのだと思う。

緊張して写真を一緒に撮るのが恥ずかしく、一生懸命その瞬間を精一杯呼吸していた。
その後、ミズリー州カンザスシティーで忘れられないコンサートを行い、翌日大きなカンザス州を一日で越え、バンジョーショップのあるデンバーに寄り、私のいとこが住むニューメキシコ州アルバカーキーでストップオーバー。
現在、彼の家族が住む現在アリゾナに滞在し、明日は8時間程かけて彼の叔母の住むサンディエゴまで向かう。
10月はカリフォルニアで友人がレコーディングをセットアップしてくれており、その後カリフォルニア州内で10日程ツアー。そのままこの秋はワシントン、オレゴン、アイダホ、ユタを通り、テキサスまでアートショーに行くためその辺りもまた廻ってみる。
ドライブはクーラーのきかないカセットプレーヤー付き99年のドッジバン。
炎天下の中、長い走行距離を走る時は快適とは言えないが、大きな空の下で大きな土地を眺めながらの旅は、文句はない。
結局出発まで免許を取らなかった私は助手席に座り、私たちのミュージックバンは西へ西へ。
途中見かけるヒッチハイクする若者達や、乾いた空気の夜空に打ち続く遠くの雷。
映画で見るようなアメリカ。
夕焼けの方角に向かって、毎日4時間から8時間ほど運転。
横断もあっという間に終了する。あとは、東西南北と旅の日々。

コーン、枝豆、ヒマワリ畑の続くカンザスより。コロラド州に入る前の夕日。

町のネオンから離れた標高1.8kmの地点へ。夜空を撮りに。コヨーテの声が風と混ざって聞こえた。
次回横断する時は、季節にもよるけれど、キャンプ用具を揃えてホテルよりもキャンプサイトで朝を迎えたい。
つづく