奈良通信 7

11.14.14 明音

9月の終わり、また京都の美山に湧き水を汲みに出掛けた。
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ちょうど稲刈りの日で、刈り取られた稲を天日干しする準備をしていた。
晴天の空の下に春先から稲を守ってきた案山子が立っていて、彼岸花も空の青と対照的にきれいだった。

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― 秋のお彼岸に咲く彼岸花 ―

軽トラに乗った農作業の途中のおじさんに無人販売の野菜の調理法を聞いてみても、とても親切に教えてくれた。ここはどの季節に訪れても空気も水もきれいで、観光地でありながら、村の人たちが特別なこともなく(商売、商売していなくて)、ごく普通に生活をしている。頭の中がきれいに洗われるところ。俗っぽく言うと、私にとってのパワースポットだ。

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美山に行った後、奈良通信を書こうと思い立ち、庭に面した角部屋に座り、窓から匂ってくる金木犀の香りに秋なのだ、と書き始めた。今年の金木犀は寒さのせいか、すぐに終わってしまった。金木犀の香りは、1年に1度の楽しみなのにとても残念な気持ちになった。そのまま、こっそり原稿も延期していた。

今年の夏、私は初めて体調を崩してほとんど家で過ごしていた。5年くらい続いた東京の檀家さんのお盆のお参りもお休みをしてしまった。奈良の家でじーっと過ごす毎日。もう少し気の利いた対応が出来たはずなのに、ただひたすらに時間を消費して、空元気なメールをいくつも送ってしまったことを少しだけ後悔している。それでも、頂いたメールや手紙は全部、温かくて有難かった。家に居ながら、仏教が私のモチベーションをいかに変化させるのか、なんて考えを議論してみたかったけど、自分の思うところに自信もなく、それもそのまま書きかけのメールで終わってしまった。要するに、早く心身ともに健康になるべし、が今回の結論だった。

先月の終わりにやっと色々なものが片付いて、お坊さんの仕事も無事に復帰。やっと、冬支度が出来そうな気持ちになった。

今回は、1月に書いた奈良通信4の追記を書こう。奈良公園で興福寺の五重塔が水面に映る名勝・猿沢池。私の大好きなミドリガメがたくさん居たところ。その時は、近い将来、外来種のミドリガメは環境省へ飼育許可をもらわないと買うことが難しいという話を書いた。

その後のお話。

2月の終わりに猿沢池は、水質調査と称して18年振りに水抜きをした。そして、水質調査と同時に水抜きした池の生物の捕獲作業をした。

駆除したミドリガメ198匹。引き取り先は、淡水ガメ保護研究施設「亀楽園」がある神戸市立須磨海浜水族園。ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)を保護して、生態研究をしている。興福寺のお膝元、猿沢池で殺処分は出来ないという理由で、須磨海浜水族園に依頼した経緯があるらしい。

水を入れ直した後には、日本の固有生物だけ戻すことになった。今、猿沢池にはミドリガメが1匹もいないことになる。

何故、猿沢池にミドリガメばかりなのだ!と怒る人。ここで殺処分はしたくない!と意見する人。どんなに多くの意見があっても、その話題の中心にミドリガメは居ない。そこに居ないことすら気づいていないだろう。この水抜きの後、近くまで出掛けても、何となく池の中を覗く気分になれなかった。今も変わらない。

小さな猿沢池の話じゃなくても、当事者ここに非ずの出来事は、本当によくあることだ。

一方、近所を流れる秋篠川のミドリガメは、天気の良い日は川の流れに乗って、ふわふわと鯉と一緒に泳いでいる。いつもバス停でバスを待つ間、秋篠川に住んでいて良かったよね、っと話し掛けてみたくなる。

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― プランターで寝ていたカエル ―

今日は、今年一番の寒さで我が家の庭の桜の葉も数えるほどとなった。
寒さに耐えながら太陽の光を浴びているお腹の大きな雌のカマキリや夜ガレージに木の実を運ぶ小さなイタチのような生き物。先日は、ズッキーニのプランターを整理していたら、底から小さなカエルが目を覚ましてきた。申し訳ないと思いながらも、プランターから杉の木の下で冬眠をしてもらうように移動した。家のまわりでも、冬に向けて小さな世界がぐるぐる動いている。

これから、もっと寒くなる冬の奈良の小さな出来事を観察していこう。

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