12.11.14 石井文得
日に日に葉の色は眩しい原色に褐色度を加え、積もる落ち葉の厚みは増えて続ける。自然界では生命秩序の移り変わりが顕著な森の中。地上は冬になり、この土の下ではそれでも多くの生命体がネットワークを広げ活動中。
今回はキノコ編です。
その前に
まず始めに
日本の国土より110%大きいカリフォルニア州。都市、海、山、森、砂漠、春夏秋冬が一つの州で同時に存在する。私のアメリカモバイル生活は、太平洋に到着した9月半ばから3ヶ月程、ツアーとレコーディングも含め、北はシャスタ山から南はSan Diegoと忙しいのかのんびりなのか、とにかく移動の日々のカリフォルニア生活を経験した。
私たちのテンポラリー拠点はサンフランシスコの隣に位置するオークランド。ここもどんどんSFから人が移り、いろいろとコストも人口密度も高くなってきているようだ。
完璧一家のような友人宅の大きなお庭に、改造した6畳近くのゲストハウスの鶏小屋があって、そこをベースに旅を続けることが出来た。壁の向こう側に住む20匹程の鶏。うち唯一の雄鶏がアラーム代わりに毎朝日が昇る前に雄叫びをあげて私たちの朝が始まった。
そしてあっという間に過ぎた11月の3週間程は、3年前にも訪れたことのある友人Fの住む北カリフォルニアはトリニティー郡の山小屋でシンプルな生活を送る。今回は 女大工(!)とシェフの彼(共にミュージシャン)というFの友人カップルが建てた山小屋で、現代の生活とは少しかけ離れた暮らしの模様を書きたいと思う。
ソーラーパネルに、水力発電(冬になると水力が増し、最大に電力を使わないとモーターが壊れそうなので、クリスマスライトや電灯を沢山付けるらしい)、薪のウッドストーブとプロパンガス、後足りない分はジェネレーターでオフグリットの生活。この当りにはFも含め、土地とライフスタイルが気に入って、都会から移り住んできた若者も少なくない。
プラスこの地域は秋になるとマリファナ収穫のため、趣味を兼ねた仕事を求め世界中から季節労働者が押し寄せるので、町は急に人口密度が増し、あちこちにドレッドロックやパンク、Greatful Deadのパッチを張ったジャケットを着た若者たちが一気に増える。
さてさて、話は戻り、ところが無念にもこのカップルが建てた山小屋での生活は、近所に住む原理主義のクリスチャンの女性が柵を馬で越え不法侵入し、ゾーニングや家のサイズ等の違反があることを密告し、あとはグーグルアースの上空写真が証拠になって地獄的に終焉に至った。急いで彼らは家のサイズを規定に合う様縮減し、なんとかFの古くなった空き家の山小屋と交換して、立派に修理し直したそちらの心地よいキャビンに引っ越した。
いろいろ大変なこともあるけれど、そのフロンティアー精神とシンプルな自給自足のオフグリット生活/可能性に3年前に初めて訪れて以来私は感銘し続けている。

珍しいクリーム色の鹿。
森の生活。
コンサートのため私たちが招かれたこの山小屋での生活は、よく電気が足りなくなり夕方にもなると闇に包まれる。なるべく明るいうちに光が必要なことを優先にして、あとはヘッドランプ(懐中電灯)を頭に付けて料理をしたり作業をしたりした。トイレもお風呂も屋外にあり、そうそう、ちょろちょろ出る熱い屋外シャワーと、素晴らしい景色が見渡せるコンポーストの屋外トイレには、冬の始まりと伴にアウトドアー生活に似た厳しさを感じ、その度に日本のお風呂が恋しくなった。皆さん、普通の現代生活はなんと便利なことか!

素晴らしい眺めだが、寒いお風呂
それでも、朝日が林の間から霧を照らす景色や、真っ暗闇の中の月と星。そして人間以外の生き物達との共存。勿論テレビもないし、電話も通じないけれど、電力が余っているときはサテライトのインターネットも付けて、最低限の情報はチェックできた。そんな中、私たちは大自然の中の小さなキャビンで、制作活動に没頭する。
カラスが上空を飛び過ぎるときに、翼の羽ばたく音を静寂の山道で初めて聞いた。その道を一人静かに歩いていると、遭遇した鹿と見つめ合い、止った時間が流れる。
シリアスな干ばつが続いてたカリフォルニアは、冬になると雨期に入り、辺りは霧と雲に包まれる。
知らぬ間に、私はあちこちに小さなキノコを発見し始めた。
最初はカジュアルに写真を撮り始めたのが、振り返れば2週間ほぼ毎日、夢中に山道を上っては下り、新しいキノコの姿を求め、キノコ写真家に。
その間、熊も含め、森の中で生きる動物達の足跡、糞、食べたものの形跡等を発見していは、大きな集合体の小さな一部として自分が存在することをしみじみ感じる。
この辺りはサスクワッチやUFOの目撃証言も多く、森の中を一人歩いているとふと感じる、視界の隅で大きなHigher Beingの存在。話は少しずれるけれど、実際私は数週間前にレコーディングを行っていたBig SurでUFOの写真を撮れたみたい。その話は次回にまわそう。
この世界、多くのものがミステリーに包まれ、私たちは機会があったら運命的に彼らに遭遇できるのだと思う。人との出会いもそうだし、キノコや森の動物達の出会いもそんな気がする。

Shaggy Mane。グルメマッシュルーム。とても繊細で、収穫後はすぐに食べること。時間が経つとgummyな黒い液体がてっぺんからかわり、姿を変えるとのこと。
キノコ写真のコレクションが増えて行くと、徐々に食用キノコとの遭遇に期待し始める。キノコ専門家と一緒にキノコ狩りをして知識を増やしつつある、フォトグラファーのブライアンと彼の5歳の娘(まさに自然児)クレメンタインと半日キノコ狩り散歩をした。

日本語だとオオムラサキシメジと、激写連続のクレメンタイン

オイスターマッシュルーム。
キノコの世界は深い。
友人のキノコ図鑑を何冊も借りて、写真を見比べるのが楽しいキノコ学入門者の私には、まだまだ未知の世界ばかりだが、これから向かうワシントン州オリンピアにポールスタメッツという著名なマッシュルーム博士がいて、ネットでも彼のレクチャーが見られるし本も沢山出ているので、来年の秋に向けて色々勉強をして見ようと思う。彼の行うワークショップもいつか受けてみたい。
http://www.fungi.com/about-paul-stamets.html
日本でもキノコが放射能を吸収しやすいので食べては行けないと聞く人もいると思うが、オイルを吸い取り食用可能なキノコが栽培できることも研究しているスタメッツは、キノコが石油リークの大惨事の処理に適していると述べる。またはシャーマン達がマジックマッシュルームを食べて、暗闇の洞窟の中をその効果のお陰で脱出できる話もあるし、火葬や埋葬では環境に良くないとして、キノコで肉体を分解させるキノコ葬を研究している人もいる。

私のキノコフィーバーはしばらく収まらず、“マッシュルームとフィットネス“ってテーマの絵のシリーズも山奥で描いてみた。
カナダや北部の西海岸は自然の松茸も良く取れるらしく、キノコ博士とハイキングに行ったFが、山ほどの松茸をお土産に持って帰ってきてくれた。日本のバイヤーも買い付けにくるらしい。
地元のカフェでは専門家によるレクチャーが開かれ、サンプルディナーも配られ、私は少し何かを学んだ気分になって、翌日オークランドへ6時間程車の旅でよれよれの格好をして都会に戻る。3週間の山奥での生活から街に帰るのはなかなかのカルチャーショックで、とにかく電気が自由に使えること、温かいシャワーが浴びれることには、心から感謝したい。(私たちの泊まった山小屋の完備が出来てなかったからのことで 、私たちの友人は普通になかなか快適な生活しています)
オークランドに戻ってきてから、近くのRedwood Forestのトレールを散歩していると、願っていたこのキノコに遭遇!オークランドは都会と山が同時に存在するから、住みたいとも思う。
このジャーナルはポートランドから書いているので、オレゴンに入った後にフリーウェイ沿いで見かける素敵なお店の写真を載せて締めくくりたい。
次回は出来たらBig Surの出来事か、ポートランドの様子か、またはワシントン州のツアーのお話等書きたいと思います。生活の移動スピードにジャーナルが着いて行けなくて、企画者ながらもう少し頑張らないと、と反省致します。