アメリカモバイル通信 3 (日本)

2月吉日 晴れ 石井文得

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相変わらずカラフルないでたちの旅ガラスが、4ヶ月半のアメリカモバイル生活/放浪から故郷に戻った。

カウンター カルチャー ショック

は、この15年間で、たびたび起こる。
アメリカに住んでいれば、年々浮き彫りになる自分の日本人らしさ。
しかし、日本に戻ればあたりまえのように、中身はなんだかアメリカ人の私。

東京の端っこに実家が位置するので、長い電車の旅では昔からコートを脱ぎ、出来るだけリッラクスした状態で本を読む。車内での読書が好きだ。

眉間に皺を寄せて携帯電話を見つめ続ける大衆。親指は今後特別な進化を遂げるのか?皆、それにしても、忙し過ぎはしないかい?手書きの葉書は書きたくないかい?
日本特有のスポーツ新聞のグラフィックページを堂々と公衆で眺める神経回路がショートしてるおじさんも、必死にゲームに打ち込む若者も、缶ビール片手にうとうとするカジュアルな酔っぱらいも、かつて彼らにも青春はあったはず。
天の邪鬼なのか、そんな光景を見ると更に私のマイノリティー志向が高まる。単行本を片手の年配陣に、アピールする、スマホに負けるか!私もそちら側です、と。

ステージに上がり人前に出るので、今までとは違う。ジム通いが仕事、と、思い込ませる。ジムに通うことで、東京での短期的な自分の存在価値も見いだせる。だから、雪の日も歩いて通ってみた。かったるい日も川を超えて行ってみた。エクササイズすればいいのだ。カウンターカルチャーショックの処方箋。

もっぱら最低限の外見しか気にしないので、ジムで輝いている素敵な装いの常連メンバーの中にいては、やはり私はださい。

でもある日。

いつもながら母のお古のような格好で現れ、始めた有酸素運動機。前方に灰色のジャージ上下のうさんくさーいおばさんがいた。本を読んでいる。大半の人がテレビを見ているので、ポイントアップ。私は斜め後ろに陣取り、自分も本があったらと後悔をしている中、ふとその足下を見れば、この人上履きを履いている。それも踵を踏んで。レアーだ。いや、おばさんではない。長髪男性だ。75分もそこで、本を読みながら、踵を踏んだ上履きを履いて、有酸素運動をしてる。勝手に私は、この人はフリッパーズギターが好きで、渋谷系なんだ、と読む。

こういう人にお目にかかると、とても励まされる。

事務通いは仕事。違う。ジム通いが仕事。

ブルックリンを去ってから、自転車通勤もほぼなくなり、YMCAもなし。農業のみの運動不足気味〜車中心のモバイル生活2年間。この生活は変えないといけない。

久しぶりにクロール40分。気分も体も最高だが、翌日にはまた塩素アレルギーが出て、3日間はアレルギー症状に悩まされる。

走るしかない。

と、やっと今になって好きになったDEVOで走る。

ほかにも。

Hudsonにもわざわざ遊びにきてくれて一緒に撮影をした東京のファッションを代表する、格好いいFacetasmの落合君と愛ちゃん。彼らがバンド『相対性理論』の衣装を手がけていて、ちょうど滞在中にコンサートがあったので、お誘いの声がかかった。

5年程前に彼らの存在を友人が教えてくれて、その日以来このバンドが大好きで、アメリカでも聞き続けていた。過去にも撮影のお願いをしたことがあるのだが、その時は知らなかったけれど、あのバンドは本当に表に出ない。youtubeもライブ映像がほとんどない。

うちのバンドとそんな点、似たところがある。

素晴らしい!

ライブの醍醐味は、その場にいないと感じられない。

なんとも忘れがたいコンサートになった。

バンドメンバーの演奏はレコードでもわかるように、グルーヴィーでとてつもなく上手。見ていても楽しい。そして、もちろんボーカルでセンターのやくしまるさんは、唯一無二の存在で・One & Onlyのアーティスト。ある意味振り付けはあるけれど、やくしまるさんは殆ど動かないので、どんなにノリノリの曲でも観客は動きを押さえ、その分内面に向かうのかな。おしゃれな若者、仕事帰りのサラリーマンやOL、素敵な中年おじさんおばさん、おたくっぽい人、業界の人、老若男女いろいろ。

そして私は、見た。心撃たれて泣いている人々を。流れる涙を指で拭う女性、あくびをした振りなのかそれでも涙がキラリ男性。周りを気にせずオリジナルに踊ってる独立した人々も。音楽に圧倒されて金縛りにあっている人々も。

私はその会場、恵比寿リキッドルームが今一番好きかもしれない東京の一面の姿だと感じた。こんな東京は、これからもとってもたのしみだ。 もしかしたらあの灰色のスエット上下の男性も、あの場所にいたかもしれない。電車で見かけたあの人たちも、ここにいたら青春をまた感じたかもしれない。

彼らの音楽には、青春のときめきをもらえる。

そして、Facetasmの落合君たちの大胆な格好よさ、仕立て、スタイルにも、インスピレーションを感じ、わくわくする。

東京だ。

こうしてこれからは相対性理論でらくらく45分ジョギング。

そして気がつけば、もう、サンフランシスコ空港。
日本を発った。
別れ際は、家族の見送りを受け、いつも涙が出る。
今回は妹も、可愛い姪っ子を連れて、来てくれた。

俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ
わかっちゃいるんだ 妹よ
いつかおまえの よろこぶような
偉い姉貴に なりたくて
(男はつらいよ、姉貴編)

お嫁に行ったし、可愛い娘も生れ、立派に母親業をしている妹。
家族に心配をかけながら、姉はこれでも地道にこつこつ頑張っています。それをわかってくれている妹。どうもありがとう。
秋には小さめの錦を掲げ、日本でのツアーなるでしょうか。

別れがあって出会いがある。旅をする程、出会い別れの繰り返し。
再び出会った大切な人々とは、大切な時間を分かち合いたい。

と、ポートランド乗り継ぎ便を9時間近くもサンフランシスコ空港で待ちながら、久しぶりのジャーナルを綴りました。これから私の大切な人とポートランドで待ち合わせ。

瀬高特派員にもまた合いに行こう。

それにしてもポートランドへ向かう日本人の姿が目立つ。

玉手箱はスーツケースの中にあるのだろうか?今回は空けないまま又アメリカに戻った。
祖母のいないおばあちゃん家で、祖母の姿を心の中で描きながら。

これからまたまた長い旅が始まる。

皆さんともどこかで合うことが出来たら。

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